ここでは 『Treating 2U』 に登場するヒロインたちとそのストーリーについて述べていくつもりです。
また、「甘い、○○というヒロインはこういうキャラクターなのダ。」等のご意見があれば、是非お聞かせ下さい。こちらで掲載させて頂きます。ご支障ある様でしたら匿名でも可です。PlainText or HTML Document にて受け付けております。
(その他のフォーマットについてはお問い合わせ下さい。)
第一回は病弱で病院に通う竹内蛍子(愛称:ル子)について。
たとえ人によっては「ヒロインではない」と言われても。
…いや、「ぷに」とか「萌え」とかではなくて(笑)
さて、今回は人生最初で最後の試み(爆)として、ル子の視点でストーリーをトレースしております。なにせこんなモノを書くのは初めてなものでアラだらけではありますが、あまり口数の多くないル子の気持ちを表現するにはこの方法が一番と思い採用しました。Play 済みの方はル子の心情を察する叩き台に、未 Play の方は雰囲気を掴む足しにでもして貰えれば幸いかと。
なお、本文中にて『Treating 2U』本編における登場人物の台詞を多数引用しておりますが、これについては著作権所有者である ブルーゲイル 様よりご了承を頂いております。
また文章量の増大に伴い、前回までを一日ごとに節に分け、以下のようにファイルとして分割しました。
初めていらして最初から読まれる方や、「設定を忘れた(汗)」など途中から読み直される方はご利用下さい。
それでは本章最新節 "Episode 7." 、次行より始まります。
楽しかったお兄ちゃんたちとのクリスマスパーティーも終わって、次の日から冬休み。「自分から話しかける」つもりで、いままでより多く年賀状を書いてクラスの友達に送った私は、不安と期待の入り交じった気持ちで年末を過ごした。
そして年が明けて元旦の朝。郵便受けにはいつもの年よりずっと沢山の、私宛ての年賀状が届けられていた。その中には、買い置きの年賀葉書が足らずに送れなかった人の名前もあった。急いで葉書を買ってきて、その人たちへも年賀状を書いて送った。あくる二日も、そして三日も。
とても嬉しかった。こんな事は初めてだったから。お兄ちゃんが教えてくれたとおりにしただけで、私には無理だと思っていた沢山の友達ができたことが。
冬休みが明けて学校が始まったら、また色々な人に話しかけてみようと思った。少しでもお兄ちゃんみたいになれるように。お兄ちゃんも天使の飾りをくれて、ずっと仲良しで、と言ってくれた。これからはひとりぼっちの寂しさのない、楽しい生活がきっといつまでも続くのだと思った。
そう思っていた、昨日までは。
今日も、いつものようにお母さんの車で病院へ向かう。去年のクリスマスイブにお兄ちゃんたちとのパーティーにお呼ばれして行ってから、年が明けてはじめての定期検診。久しぶりにお兄ちゃんに会えるのだから、本当なら嬉しくて仕方がないはずなのに、今はとてもそんな気分になれない…。
検診も終わって、ロビーに戻る。辺りを見回してお兄ちゃんの姿を探してみるけど、見つからない。お兄ちゃんの病室に行ってみることにした。正直を言うと今、お兄ちゃんに会うのはとても気が重いけど、どうしても言わなければいけないことがあるから。
病室の入り口から覗いてみると、お兄ちゃんがいた。入りずらくて、その場で声を掛けてみる。
「・・・お兄ちゃん」
「どうした、ル子。こっち来いよ」
「・・・うん」
言われたとおり、お兄ちゃんのそばまで入っていく。でも、どんな顔をして良いか分からない。そんな私を見て、心配そうにお兄ちゃんが話しかけてきた。
「どうした、ル子、元気ないな。なんかあったのか?」
「あのね」
「ん」
「あのね。もう、お兄ちゃんと、会えなくなるの」
できれば言いたくなかった、でも言わなければいけなかったこと。それを聞いて、驚いた顔を見せるお兄ちゃん。
「・・・どうして?」
「・・・ぅぅうっ、お兄ちゃーん」
私はこらえていた悲しい気持ちが涙と一緒にあふれてきて、たまらずお兄ちゃんの胸に飛び込んでしまった。
私が泣いている間、お兄ちゃんは何も言わずただ私を抱きしめ、優しく頭を撫でていてくれた。
おかげで涙もおさまってきて、底が無いかと思っていた悲しい気持ちも少し和らいできた私は、お兄ちゃんの胸に埋めていた顔をゆっくりと上げる。
「落ち着いたか、ル子?」
「・・・うん、ありがとう、お兄ちゃん」
「ああ・・・じゃあ、理由聞かせてくれるか?」
いつもの微笑みで、優しく聞いてくるお兄ちゃん。私はできるだけ気持ちを落ち着かせながらそれに答える。
「・・・あの、ね、急に、引っ越し、することになったの」
「遠いのか?」
うまく出ない声の代わりに、小さく頷く。お兄ちゃんは少しの間考える顔をして、話を続ける。
「いつ、行くんだ?」
「・・・明後日」
「早いな」
「・・・ぅぅうっ」
お兄ちゃんの言うとおり、明後日は早すぎる。引っ越しの話を聞いたのは昨日で、あまりに突然のことだったからまだ気持ちの整理ができていない。これから仲良くしようと思っていたクラスの人たちになんて言って良いか分からないし、なにより、いつまでも仲良くいられると思っていたお兄ちゃんと離ればなれになって、会えなくなる。それを思うとたまらなく悲しくなって、涙が出てきてしまう。
また悲しい気持ちで胸がいっぱいになってしまった私に、お兄ちゃんは優しく話しかけた。
「でも、もう会えなくなるわけじゃないだろ」
「・・・だって」
「確かに、しばらくは会えなくなるかもしれないけど・・・」
「ル子にも俺にも時間はいっぱいあるだろ」
「・・・うん」
「信じて努力すれば、なりたいものになれるように、ル子だってまた会えるって信じていれば、きっとまた会える」
「・・・本当?」
「ああ、俺だって信じて努力しているから、必ず唄歌いになるし・・・」
「そしたら、テレビにも出るから、ル子にも、その時俺が何やってるか分かるだろ」
「・・・うん」
テレビに出るような歌手になるのは、そう簡単なことじゃない。それは私でも分かる。でも、ひとりぼっちだと思っていた私の寂しさを、その言葉でうそのように無くしてくれたお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんが歌手になるって、また会えるって言ったなら、きっと歌手になるし、また会える。そう思って、お兄ちゃんの言葉を信じる事にした。
「ル子は、将来なんになりたいとか、あるか?」
お兄ちゃんはそう私に問いかけてきた。私は正直に答える。
「・・・ある、よ」
「なんになりたい?」
「・・・お嫁、さん」
こういう質問に、まわりの女の子たちはたいがい看護婦さんやスチュワーデスって答えるけど、私はお嫁さんになりたい。そう言うと笑う人もいるけれど、小さい頃から体が弱い私を優しく気遣ってくれるうちのお母さんを見ているから、いつか私もそんな優しいお母さんになれるように、素敵なお嫁さんになりたいとずっと思ってた。
そんな私の答えを聞いてもお兄ちゃんは笑ったりせずに、
「うん、ル子なら、いいお嫁さんになれる。俺が保証するよ」
そう言ってくれて。誰よりお兄ちゃんがそう言ってくれたのが心強くて、とっても嬉しかった。
お嫁さんになりたい、そう思う気持ちは前からずっと変わっていない。でも、一つ変わったことがある。それは「誰の?」ってこと。前はそんなの考えたこともなかったけど、今はどうしてもその人のお嫁さんになりたいと思うようになった。そのことを言うために、私は言葉を続けた。
「私・・・」
「お兄ちゃんの、お嫁さんに、なりたい」
「・・・俺の」
「・・・うん」
いつもならこんなときは顔も見れずに下を向いてしまうけど、私の正直な気持ちだと言うことを伝えるために、今は勇気を振り絞ってお兄ちゃんの瞳を見て話した。そのせいで心臓がドキドキして、顔がとても熱くなってる。きっと、お兄ちゃんみたいな大人の人に私のような子供がそんなことを言うのは変かも知れない、もしかしたら笑われるかも知れない。でも、それでもかまわない。離ればなれになる前に、言っておきたかったから。
お兄ちゃんは私の言葉を聞くと、一瞬驚いた顔をした。そして次の瞬間、満面の笑顔になって、思ってもみなかった返事をしてくれた。
「・・・そっか。じゃあ、今俺のお嫁さんになるか?」
「え?」
「先の事は分からないけど、ル子が引っ越しする前に、俺と式だけあげよう」
「・・・本当、お兄ちゃん?」
「ああ、ル子には建のこととか、世話になりっぱなしだからな」
信じられない言葉だった。こんな事言ったら、馬鹿にされても仕方ないと思っていたのに、お兄ちゃんは真っ直ぐに受け止めて返事をしてくれた。
やっぱり、お兄ちゃんは私がお嫁さんになって、いつまでも仲良くいたいと思えるとっても優しい人、そう感じていたことに間違いはなかったと思う。
「それじゃ、いろいろ用意しなきゃな」というお兄ちゃんの言葉で、私とお兄ちゃんの結婚式の準備が始まった。
まず、和服がいいかドレスがいいかをお兄ちゃんに聞かれて、私はドレスがいいと答えた。たまにデパートのショーウインドゥとかにある綺麗なウェディングドレスを見ると、やっぱり和服よりドレスにあこがれてしまうから。ドレスは貸衣装屋さんに行って私が気に入ったものを選んだ。でも貸衣装代が高かったみたいで、お兄ちゃんは普段着になってしまって…。
つぎにウェディングケーキ。ケーキと聞いて、私は去年のクリスマスパーティーでお兄ちゃんとしたケーキの約束を思い出した。離ればなれになってしまうから、約束は守れそうにない。その事を残念に思っていると、お兄ちゃんが「建くんのお母さんに頼んで、私と一緒に作ってもらう」というアイデアを出してくれた。それならお兄ちゃんとの約束を守ることができる。お見舞いに来た建くんのお母さんに会ってその事をお願いしてみると、建くんのお母さんは快く引き受けてくれて。明日スポンジを焼いてきて、病院で一緒に飾り付けをしてくれることになった。
指輪は、前にお見舞いに来たときにお兄ちゃんからプレゼントしてもらったもの。今私の胸元で銀色のネックレスとなって輝いている。私には他のどんな指輪よりも、これが一番素敵だと思う。
場所はクリスマスパーティーの時と同じように、霞夜お姉ちゃんの病室を借りることに。霞夜お姉ちゃんも二つ返事で約束してくれた。
式はお兄ちゃんのバンド仲間の人たちにお願いすることになった。その人たちと電話で話すお兄ちゃんは、なんだかとても楽しそうで。楽しい、いい人たちに違いないと思う。
あと、式には看護婦の愛さんと杏菜さん、お医者さんの志摩先生を呼んだ。それと郁乃お姉ちゃんには式の間、建くんの相手をしてくれるようにお願いした。
あわただしくて、ささやかだけど、何から何までふたり一緒に決めて準備した、私とお兄ちゃんの手作りの結婚式が明日、開かれる。
[End of text / Last modified 2002/10/31 19:58 (JST)]
It will continue on next section, " Episode 8. ".