Treat girls, Now !
- 彼女達に癒しの手を -


≪Chap. 1.≫ Pretty girl, Little lady.

≪Chap. 1.6.≫ Episode 5. - 勇気 -

 前回 "Episode 4." の続きです。

≪Chap. 1.6.1.≫ Courage

 今日、私はある事を決心して学校に行った。
 ある事とは、友達がたくさん出来るように、昨日お兄ちゃんから教わった「自分から話しかける」事。
 他の人には何でもないかも知れないけど、私にはとても思い切りが要る事。
 でも、お兄ちゃんとの約束だし、「保証する」と言ってくれたお兄ちゃんの気持ちに応えるために、がんばってみよう。

 お昼休み、決心がにぶらないうちに誰かに声をかけてみる事にする。誰にしよう?
 席の両側は男の子だから話しづらいし、前の女の子は振り向いて貰わないといけないし。
 …よし、後ろの女の子にしよう。いつも明るくて、友達もたくさんいるところ、お兄ちゃんに似てるから。
 私は話しかける言葉を考えて、息を整えて、ゆっくりと後ろの席に向いた。
 心臓はドキドキするけど、出来るだけ気を落ち着けて、後ろの女の子に話しかける。
「あの、私…」

≪Chap. 1.6.2.≫ Farewell to loneliness

 学校から帰ってすぐ、お母さんに病院へ連れて行ってもらうお願いをした。
――今日学校で、友達が出来たこと。
 その事をお兄ちゃんに、早く知らせたかった。
 忙しそうなお母さんに、二日続けて送り迎えをお願いするのはわがままかとも思った。けど、わけを話すとお母さんはすぐに連れて行くと言って、車のエンジンを掛けてくれる。
 私はお母さんに感謝しながら車に乗って、お兄ちゃんのいる病院に向かった。

 病院に着くと玄関を入ってロビーに行く。お兄ちゃん、検査とかが無いときはここで建くんと一緒にいることが多いから。
 そう思って辺りをさがしていると遠くから私の名前を呼ぶ大きな声、建くんだ。こっちに向かって走ってくる。
 私が元気のいい建くんに挨拶していると、その後ろからお兄ちゃんも歩いてきた。お兄ちゃんにも挨拶すると、建くんが私に何か言いたそう。聞いてみると二十四日にここの皆んなでクリスマスパーティーをするらしくて、そのお誘いだった。「お兄ちゃんは?」と気になったことを聞くと「当然いるよ」って返事。
 私はちょっと待ってもらって、電話でお母さんに行って良いかどうか聞いてみる。お母さんは二つ返事で O.K. の答え。そのことをお兄ちゃんたちへ言うと、建くんがとても喜んでくれた。

 パーティーの話がまとまったので、私はお兄ちゃんに知らせたかったことを話した。
――今日、後ろの席の女の子に話しかけてみたこと。
――その子は、今まで私が何も言わなかったから、声をかけづらかったと言ってたこと。
――私と仲良くなりたかった、と言ってくれたこと。
――そして、友達が出来たこと。
 それを聞くと、お兄ちゃんは笑顔で、
「良かったな、ル子」
そういって、私の頭を撫でてくれた。
 そしたら、今日まで学校でひとりぼっちだった寂しさと、友達が出来たことで明日から学校でも寂しくなくなった事の嬉しさで、胸がいっぱいになってしまって。思わず涙が出てきてしまって、お兄ちゃんの言葉にも、
「うんっ」
とひとこと答えるのが精一杯だった。
 私が泣いてしまった事で建くんがお兄ちゃんに怒ってしまって、なんだかお兄ちゃんを困らせてしまったけど、うれしかった事を伝えると「ああ、分かるよ」と言ってくれた。

 お兄ちゃんのその言葉は、他の人が言う気休めやなぐさめとかじゃない。
 お兄ちゃんも子供の頃、私と同じような思いをして、その寂しさを知っていた。短い言葉だけど、話し方や笑顔でもそれがわかる。
 そんなお兄ちゃんが、お兄ちゃんらしいやり方で、どうしたら友達が出来るかを私に教えてくれた。そのおかげで、私にも友達を作ることが出来た。
 お兄ちゃんはその嬉しさを分かって、一緒に喜んでくれて、それを言葉にしてくれる。
 ありがとう、お兄ちゃん…。

≪Chap. 1.6.3.≫ Duo

 私をいじめていると勘違いした建くんの誤解をといてから、「これから郁乃のとこに行く・・・」と言いかけたお兄ちゃん。それを聞かずに建くんが「踊ろーっ」と私の手を取る。
 建くん、ダンスを好きになってくれるのは嬉しいんだけど…。そう思っていると、「悪いけど、建に付き合ってやってくれるか?」とお兄ちゃんに頼まれた。郁乃お姉ちゃんを呼んで来るって。
 私が頷くと建くんは「にーたんバイバーイ」と言って私をロビーへ引っ張っていく。私より元気のような気がするよ、建くん。

 少し広い場所を見つけて、ダンスの練習を始める。建くん、昨日教えたばかりなのにもう踊れるようになってる。すごい。もしかしてずっと練習してたのかな?
 ためしに私も一緒に踊ってみると、だいたい合わせられるようになってた。
 いままで、うちのお兄ちゃんに教わりながら一人で踊っていたから知らなかったけど、一緒に合わせて踊るのは思ったより楽しい。

 その調子で建くんと踊っていると、いつのまにか周りに人が集まっていた。
 もしかして、迷惑になってた? そう思ったけど、誰も何も言わずに見てるだけで。
 見られるのはちょっと恥ずかしいけど、お兄ちゃんに建くんのこと頼まれているし、建くんも楽しそうだったからそのまま続けていた。

 しばらくして、お兄ちゃんが郁乃お姉ちゃんを連れて戻ってきた。
 私たちの周りの様子を見て驚いているみたい。
 お兄ちゃんが近くに来て「どうしたんだ?」って私に聞くと、私が答えるより早く、和服を着たおばあさんが間に入ってきてお兄ちゃんと話し始める。なんだかお兄ちゃんのことを怒ってるみたい。なんでだろう?
 おばあさんの突然の話にお兄ちゃんが困りながら答えていると、踊りを中断したままでウズウズしたのか建くんが「ほかのも教えてーっ!!」と私に言ってきた。
 私はそれに頷いてあげたんだけど、そしたら急におばあさんが納得した様子で、話を終わらせて行ってしまった。なぜだか良く分からないけど、一緒に周りに集まっていた人もいなくなったから助かったかな。

 約束通り建くんにほかの踊りを教えはじめると、近くのソファーにお兄ちゃんと郁乃お姉ちゃんが座って話し始めた。さっき私も聞かれた、クリスマスパーティのお誘いの話。途中、なぜだか郁乃お姉ちゃんの顔が赤くなったりしてたけど、郁乃お姉ちゃんも参加することに決まったみたい。

 二人の話がまとまったみたいなので、お兄ちゃんにお願いをしてみた。
「また、お兄ちゃんの歌で踊りたいんだけど・・・」
「ああ、かまわないぞ」
「本当?」
「ああ」
「えへへ」
 お兄ちゃんの良い返事が聞けて喜んでいると、郁乃お姉ちゃんが「伊之助さんの歌?」って聞いてきたから「昨日聞かせてもらったの」って答えた。そしたら「へ〜、私も行っていい?」って。
 お兄ちゃんも「構わない」って返事だし、建くんも昨日みたいに屋上で踊れると聞いて、喜んでお兄ちゃんを急かす始末。

 結局、それからみんなで屋上に上がって、夕方まで建くんと一緒にお兄ちゃんが弾くギターと歌で踊ってた。
 今まで知らなかったけど、ダンスって好きな歌、それと一緒に踊る人がいると、こんなに楽しいものだったんだね。

 夕方、お母さんが迎えに来る頃になったので、玄関であらためてクリスマスパーティーに来る約束をして、みんなとお別れした。
 みんなでパーティーかぁ…。クリスマスの日が楽しみ。


Continued on next section, " Episode 6. ".


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