第一回は病弱で病院に通う竹内蛍子(愛称:ル子)について。たとえ人によっては「ヒロインではない」と言われても。
いや、「ぷに」とか「萌え」とかではなくて(笑)
さて、今回は人生最初で最後の試み(爆)として、ル子の視点でストーリーをトレースしてみます。なにせこんなモノを書くのは初めてなものでアラだらけではありますが、あまり口数の多くないル子の気持ちを表現するにはこの方法が一番と思い採用しました。Play 済みの方はル子の心情を察する叩き台に、未 Play の方は雰囲気を掴む足しにでもして貰えれば幸いかと。
なお、本文中にて『Treating 2U』本編における登場人物の台詞を多数引用しておりますが、これについては著作権所有者である ブルーゲイル 様よりご了承を頂いております。
それではル子視点の 『Treating 2U』 、次行より始まります。
私は竹内蛍子、小学生。
生まれつき身体が弱くて、お医者さんにはよくお世話になってる。学校もお休みすることが多くて、お話しする友達もあまりいない。うちではお兄ちゃんがダンスを教えてくれたりして遊んでくれるけど、それは兄妹だからだと思う。思いっきり走ったりして遊べない、学校にあまり来ない子なんて、ふつうは友達になって一緒に遊んでくれないよね。
でも、やっぱり友達が欲しい。一人は寂しいから……。
その日も、いつもの定期検診を受けに病院へ行った。
ひととおりの検査が終わってロビーに戻ると、男の人が小さな男の子と一緒に TV の前のソファーに座ってて。
その人の髪は見た事も無い、とても綺麗な青色で。
思わずその人の隣に座ってしまって。でも恥ずかしくて顔を上げられなくて。
そうこうしていると、看護婦さんが検査のために男の子を呼びに来た。でも男の子は未だ終わらない TV 番組観たさに不満顔。検査だから仕方ないよね、なんて思ってたら。
男の人「あのさ、このテレビあと10分で終わるから、それまで待ってくれねぇかな?」
看護婦さん「え?」
え? 看護婦さんと同じ言葉が出そうになった。声には出さなかったけど。
TV を観たいのは分かるけど、お医者さんを待たせたら悪いよ。そう思った、でも。
男の人「建、朝からこれ見たくてここに陣取ってんだ。どうかな、無理か?」
あ、そうだったんだ……。
私も看護婦さんも、そんなこと知らなかった。でも、青い髪の男の人は男の子のこと、ちゃんと分かってあげてて。まだきちんとお話しできない男の子の代わりに、看護婦さんにお話ししてくれてる。
なんだかとっても、優しい人。こんな人と友達になりたいな…。
結局、検査は TV 番組が終わるまで待って貰えて、男の子も無事観終わって満足したみたい。自分のことではないけど、良かったなぁ、なんて思っていたら突然。
男の人「それじゃ、いくか」
あっ、行っちゃう……。
そう思ったらつい、立ち上がろうとした男の人の袖を掴んでた。そんなつもりはなかったのに。男の人は気がついて座り直して、声も掛けてくれたけど、恥ずかしくて顔を上げられない。どうしよう、と思っていたら。
男の人「俺は、堤伊之助。それで君の名前、教えてくれるかな?」
つつみいのすけ、伊之助お兄ちゃん。格好いい名前。っと、いけない、名前聞かれてるんだった。
あわてて答えたら、声がちゃんと出なかったみたいで、聞き直されちゃって。そしたら。
伊之助お兄ちゃん「うん、蛍子な・・・じゃあ、ル子って呼んでもいいかな」
呼び名を付けてくれるのは、仲良くなった気がして嬉しくて。すぐに「うん」とお返事した。
それから、ちょっと私のことを話した後、伊之助お兄ちゃんが「建と友達になってくれないか?」って。建ってあの男の子のことだよね。友達になるのは全然かまわない。けど、私が本当に友達になりたいのは……。
私「建くんと、友達になったら・・・」
お兄ちゃん「ん?」
私「お兄ちゃんの所に、遊びに行っても・・・いい?」
聞かずにいられなかった。私みたいな子供が遊びに行ったら、きっと迷惑なのに。
でも、お兄ちゃんからの答えはビックリするほどあっけらかんで。
「ん、ああ。全然かまわねぇよ」
!? ちょっと信じられなくて「・・・本当?」なんて聞き直してみたけど、お兄ちゃんは変わらない笑顔で「ああ」って。拍子抜けしたせいかも知れないけど、あんまり嬉しくて思わず「えへへ」って笑ってしまった。変な子かと思われたかも。
そうしたら今度はお兄ちゃんから、
「あのさ、ル子はどうして急に俺の隣に座ったりしたんだ?」
って聞かれた。なんて答えようか迷ったけど、とりあえず「髪の毛が綺麗だったから」って答えた。これも嘘じゃないから。そしたらお兄ちゃんもわかってくれたみたい。だから、もう一つの、お兄ちゃんの隣に座ったわけも、思いきって言ってみた。「お兄ちゃんが優しそうだったから」って。でもこっちはあまりわかってくれなかったみたい。お兄ちゃん、自分で気付いていないのかな?
ふと時計を見ると、もうすぐお母さんが迎えに来る頃。お兄ちゃんにそう言ったら「じゃあまたな」って返事。別に変ではないけど、お別れしてしまうと、二度とお話しできなくなりそうな、そんな寂しい気がして。
でも、そんな私にお兄ちゃんは、
「待ってるぞ」
って。きっと寂しい気持ちが顔に出たのを見て、そう言ってくれたんだろうけど、とっても嬉しかった。あんまり嬉しくて思わずまた「えへへ」って笑ってしまった。
やっぱりお兄ちゃん、優しいよ。
病院を出るとき、お兄ちゃんに思いっきり手を振った。友達になれた嬉さと、また会えるように願いを込めて。
Continued on next section, " Episode 1. ".