昨晩録画しておいた NHK 教育『サイエンス ZERO』の再放送を観る。
普段あまり TV を観ない俺が録画してまで観た理由は「はやぶさ」について特集していたから。しかし、噂に聞いた通りさもサンプルリターンメインのミッションのごとく語られていてガッカリ。イオンエンジンについては多少触れられていたが、自立型探査機技術については自立の「じ」の字も出ていない。おそらく他の技術に比べて地味に見えたんで番組の構成や尺の都合で切ったんだろう。でもスタートラッカーで現在位置と進路を認識し、通信波のドップラーシフトで加速量を知り、地球からのオペレーションと併せることで微弱重力の小惑星へぴたりと寄せる、すごい技術なんだぞ、これ。ISAS の担当者、泣いてるだろうな。
それと、誇張や省略はともかく嘘はいかん。ツッコミどころがいくつか有る。
ひどいところでは小惑星の大きさについて。天文台からの光学望遠鏡観測で火星と比べ暗いことから「小さい」と曰うのはおかしいだろう。それはあくまで地球からの見かけ上の大きさ、明るさなんだから。そも比較対照となった火星だって地球接近時とそうでない時とではかなり差がある。
それとイオンエンジンの解説もひどい。化学エンジン(ここで液酸液水を出すのもどうかと思うが)に比べて太陽電池の電力を使うから推進剤が少なくて済む、とか言うとったが訳の分からん理屈だ。同じ速度増分を得るなら化学エンジンより推進剤が少なくて済むのは確かだが、それは比推力が文字通り桁違いに大きいおかげであって、太陽電池の電力を使うからではない。こんなでたらめな解説作ったの、誰だ。
人は少なからず何かしらについて興味があって、それについて人並み以上の知識を持つ。番組の中でこうした嘘をつくと、それに詳しい人間はたちまち番組とそれを制作、放送した放送局に不信を抱くだろう。昨今の NHK 批判や NHK 離れはこうした積み重ねもあるのではないかな。公共放送の存在自体はとても重要だと思っているが、この調子では視聴者から見放されてもやむなしか。
ところで昨晩は『視点・論点』でも JAXA の的川先生が出てたけど、取材協力とのトレードか?
昨日ひまわり 6 号に不具合が起きたそうだ。予備系統への切り替えで復帰できたとのことでまずひと安心だが、気がかりは残る。
ひまわり六号は歴代ひまわりとは形式、方式とも全く違う衛星であり、しかも多目的衛星として気象観測以外の機能も搭載している。多機能で高性能となっているその反面、技術の「枯れ」が少なく不具合発生の可能性が高いとも言え、少々心配だ。台風シーズンはまだしばらく続くし、予備機である MTSAT2 の打ち上げとてすぐとはいかない。 ADEOS(みどり)や ADEOS-II(みどり II)のような短命にならねばよいけれど。
日本のみならず環太平洋諸国にとっても頼みの綱だしね。