春の恒例、第29回 宇宙科学講演と映画の会へ行く。今年は例年よりスケジュールが三十分早いのを見込んで十二時半過ぎに会場到着。
するといきなりエントランスからはみ出るほどの行列が。習性でとりあえず最後尾についてみたが、どうも受付でパンフレットなどを受け取るのを待っているらしい。並ぶものでもないような。そうこう考えを巡らすうち、はやしのさんを発見。一旦離脱した後「どうしますか」「とりあえず並んでおきますか」と言うことで再び最後尾へ。パンフレット類をもらうと今度はホール入口へ行列ができている。今年は訓練されてる参加者が増えたというのか。とりあえず空いている方の入口へ並び、予定時刻より十五分ほど早く開場。いつもの席を確保。
定刻十三時半開会。阪本成一先生司会、小野田淳次郎所長挨拶。今月一日から ISAS はその名称を宇宙科学研究所へ戻したので所長。
講演は石田学先生による『「すざく」とMAXIが切り開くX線天文学』、澤井秀次郎先生による『セミオーダーメイド型の小型衛星で拓く新しい宇宙科学の世界』を各五十分間。それに加えそれぞれ二十五分間の質疑応答。
石田先生は高重力場、大規模爆発、粒子加速を促す高磁場といった X 線源天体の観測意義と科学衛星による観測の必要性を説明。その後、大規模構造における銀河団の組織化、超新星残骸による宇宙線加速、銀河中心ブラックホール、ブラックホールの超高重力による時空ひずみがもたらす見かけ上の降着円盤ゆがみ、木星オーロラの X 線放射といった X 線天文衛星「すざく」による観測成果を紹介。また日本実験棟「きぼう」に設置された全天 X 線監視装置「MAXI」との連動による観測の即応性向上を説明。多少の専門用語は出るもののウィットもはさむ語り口で聞きやすかった。
澤井先生は巨大化、複雑化、多様化が進み研究頻度の低下というジレンマを抱えている科学衛星に対し、標準インターフェイスを設けて仕様をカタログ化、メニュー化することによりセミオーダーメイドで多様なニーズに即応できる小型科学衛星シリーズを紹介。現在のところ詳細設計フェーズまで進行中とのこと。一号機 SPRINT-A 完成の暁にはプロジェクト進行中の次期固体ロケットイプシロンロケットによる打ち上げを予定。低費用、単独打ち上げ、即応性向上を図る。しかるのち二号機、三号機と続く。三号機以降提案されているミッションの良い意味でのゲテモノっぷりには噴いた。編隊飛行でニコイチ望遠鏡とか珍品過ぎる。澤井先生はこういった場での講演は少ないのか言葉が詰まる場面が散見されたが、モジュール構造を PC に喩えたりと分かり易く伝える努力は感じられた。
質疑応答では客席からさまざまな質問が投げかけられ、SPRINT-A には T-Kernel が採用されているなどの話を聞けたが、質問内容が途中で変わってしまったり、「宇宙の果ては」など定番ながら講演内容とは関係ない質問があったりと、こちらはあまり訓練されていないようだった。聴講中に頭の中なりメモ書きなりで纏めておくと良いだろうにと思う。司会の阪本先生がナイスなリアクションで上手く纏めてくれたが、より一層の鍛錬に期待したい。
映画は今回新規制作の予算がなかったそうで、今年四十周年を迎えた「L-4S-5/おおすみ」と来月打ち上げ予定の「金星大気の謎に挑む〜金星探査機『あかつき』〜」を上映した。おおすみの方は完全に記録映画でダイナミックバランスの測定など非常にアナログな雰囲気がむしろ新鮮にすら感じた。
閉会後、「宇宙の電池屋」曽根理嗣先生の講演希望をアンケートに書き、はやしのさんと共に駅西口のルノアールでお茶。以前よりタバコの煙はきつくない様子。一方、女性店員の制服に目を輝かせるはやしのさんであった……。