Misc. of "T2U"
- 『Treating 2U』アレコレ -


≪Chap. 4.≫ MOMIJI in "verge"

 第四回は先日発売された I've 2nd album "verge" に収録されている、女性ヴォーカル version の "bite on the bullet", "Treating 2U" に対する私見をば。

 なお本文中、Treating 2U本編の「杏菜END」「伊之助END」、完全制覇 CD-ROM 内のおまけストーリー「メモリーズ」の内容に言及している部分があります。未 play の方にはネタばれとも言えるのでご注意下さい。

≪Chap. 4.1.≫ Are these songs MOMIJI version ?

 I've の 2nd album と言える CD 『"verge" I've GIRLS COMPILATION .2』が 7/14 に発売されました。自分も 7/20 に秋葉原へ買いに行きましたが、お店によっては品切れしているところもあって、I've 人気の高さがうかがえます。

 自分が購入したのは I've サウンドが気に入っていることも勿論ですが、それよりも重要な理由がありました。重要な理由とはTreating 2Uの挿入歌と主題歌である "bite on the bullet""Treating 2U" が、女性ヴォーカル version となって収録されている事。

 たかが女性ヴォーカル version と思う人もいるでしょうが、Treating 2Uを play した自分にとってはめさめさ重要な意味があります。それは「この曲達って、もしかして、紅葉 version ?」という期待があったから。紅葉が伊之助からヴォーカルを引き継いで歌っているという設定では? と思ったんです。(web を見て回っていると他の方々も同じように考えていたみたいですね)

 だから女性ヴォーカル version が入ると聞いた時点で、
「俺は聴かずにいて良いものか? いや良いはずがない(反語)」
と思った訳で。

 CD を買ってからその 2 曲を聴きました、何度も何度も。で、聴いているうちに思ったんです、
「この 2 曲、別々の”紅葉”が歌ってる」
って。同じヴォーカルが歌ってるけど違うな、と。

≪Chap. 4.2.≫ MOMIJI in "bite on the bullet -under mellow style-"

 一番始めに "bite on the bullet -under mellow style-" を聴いたとき、強い違和感を感じました。それこそ「こんなの紅葉じゃないやいっ(涙)」って思ったくらい。もちろん自分がイメージしていたのと声質が違うってことも有りましたけど、それ以上に「曲調」や「歌い方」が "bite on the bullet" らしくない。

  "bite on the bullet" 、その題名と歌詞の意味するところは第一章で書いたとおり、「思う様にならない現実に、それでも音楽一つで立ち向かっていく伊之助の姿」であると思っています。オリジナルの曲調や歌い方もそれを表現するように男性ヴォーカルによるまっすぐで力強い歌われ方で、とても聴いていて気持ちのいい、伊之助らしい歌だと思います。

 ところが今回の女性ヴォーカル version の曲調や歌い方は、そういった題名や歌詞の意図とは違うベクトルを持っているように感じられる。お洒落っぽくて、穏やかで、艶やかで、 under mellow style という看板に偽りはないのだろうけど、それでは "bite on the bullet" と言う歌が持つメッセージはオリジナルのように表現できていないのではないかと。

 で、紅葉が好き好んでこんな曲調や歌い方をするか? と考えると、まずしないでしょう。彼女は伊之助の相棒であり、伊之助が作る歌、それが持つ意味やメッセージは間違いなく掴んでいるはずで、自らそれを変えるようなことをするとは思えない。彼女が器用で、 1 のモノを 2 や 3 に出来るからと言って、伊之助が作ったはじめの 1 を無くしたようなモノは作らないはず。

 じゃあ、この under mellow style はというと、たぶん、「杏菜END」後に伊之助が作ったのではないかと。

 杏菜と共に生きることを選び、手術で声を失った伊之助が、「メモリーズ」の中で紅葉にこんな事を筆談します。

「今までの、俺の曲。
 これからの俺の曲。
 全ておまえの為に、おまえが歌いやすいように、
 俺は作ってゆくよ。
 それが、応える事ができなかった、
 俺からおまえへの気持ちだ。
 だから、これからも、一緒に行こう」

 この三〜四行目の言葉から考えると、 under mellow style は納得が行くんです。紅葉の様なヤツって実はけっこう照れ屋だから、まっすぐな歌い方ってのは苦手なんじゃないかと。それに女性である以上、力強い歌い方をしようとしても男性には勝てない部分がある。それなら無理に真似をしなくとも良いようにと、紅葉が歌いやすいように伊之助がアレンジする。で、出来上がったのがあの "bite on the bullet" 。そう考えると、オリジナルとは”球筋”が違うけど、紅葉らしい "bite on the bullet" にはなってるかな? と思います。

 だから "bite on the bullet -under mellow style-" を歌う紅葉は、
「杏菜END」後の、伊之助が生きる世界の住人だ
と考えています。

≪Chap. 4.3.≫ MOMIJI in "Treating 2U -wrap up style-"

 "Treating 2U -wrap up style-"、この曲もオリジナルとは曲調や歌い方が変わってますが、 "bite on the bullet" ほど違和感は感じませんでした。

 オリジナルではやはり男性ヴォーカルによる力強く歌われ方で、聴く人の勇気を奮い起こさせ、またある意味、伊之助自身を重ねるようなイメージ。それに対して今回の女性ヴォーカル version はどちらかというと、聴く人を包み込み、「癒し」を与えるようなイメージが強い。

 「これはこれでしっくりくるなぁ」と脳天気(笑)に聴いていたものの、 "bite on the bullet" について前述のような考えに至った時点で、
「じゃあ、この曲での紅葉って?」
と考え始めてしまった。悪い癖(苦笑)。

 はじめは "bite on the bullet" と同様、「杏菜END」後に伊之助が作ったのでは、と思ったもののどうも引っかかる。「癒し」のイメージが女性的、というよりむしろ「母性的」に過ぎて、漢の伊之助が作ったイメージではなくて。では伊之助ではなく紅葉が作ったと考えてみるものの、紅葉がむやみやたらに曲をいじるとは思いづらく。

 で、結局思い至ったのは、紅葉が作らざるを得ない状況、即ち作ってくれた伊之助がもういないからでは、と。つまり、「伊之助END」後に紅葉が作ったのではないかと。

 そう考えて、もう一度 "wrap up style" を聴き直すと、歌に生きそして逝ってしまった伊之助を想い歌う、”鎮魂歌”のようにも聴けてしまって。ちょっと辛くなりますけどね。

 だから "Treating 2U -wrap up style-" を歌う紅葉は、
「伊之助END」後の、伊之助亡き世界の住人だ
と考えています。

≪Chap. 4.4.≫ Here MOMIJI is.

 正直なところ、聴くまでは「紅葉イメージが崩れたら嫌だなぁ」と思っていたこの 2 曲も、MP3 や MD となって連日ループしてます。えらい現金なモノです(笑)。

 ちなみに 2 曲とも DISC 1 に収録されているので聴く際は平等に演奏されてますが、「どちらが好き?」と訊かれれば、自分は "Treating 2U" に軍配を揚げます。これはオリジナルでも同じです。理由は…やはり「伊之助END」の影響が強すぎ(苦笑)。伊之助がこの曲をどんな想いで作り、そして歌ったか? なんて考えた日には、そりゃもう堪らないモノがありますから。

 ま、自分の好みはともかく。

 以上のことはあくまで自分の私見です。同じくTreating 2Uを play した人でも別の見解を持って然るべきでしょう。「やっぱりこんなの紅葉じゃねぇーっ!」って人がいてもなんの不思議もなく。それどころかTreating 2Uを play していない人にとっては他の I've の曲と同列な訳で、所詮は自分の想像、いや妄想です。

 でも、それでも。"verge" を聴きながら、
「紅葉がいる。伊之助を受け継いで歌ってる」
と自分は思ってます。思う分には勝手だし、タダですからね(笑)。


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