ここでは、ザウルス用高機能モノクロスケッチツール『ざうすけ』を使った自分なりの描き方と、それに関連するメモを自身の整理も兼ねて簡単に纏めておきます。なにぶんヘタレなので詳細な機能の使用法や高等な技術などは一切述べられませんが、良ければ何らかの参考やヒントの足しにでもして下さい。
『ざうすけ』による自己流お絵描きの簡単な手順説明。サンプルには落描き 弐拾七番を使用。
まずは片方のレイヤを使って下描き。
資料とにらめっこしながら 1pix. 幅の細線で頭の中のイメージをとにかくざざっと描いてしまう。この時点では基本的に全体のバランスをとっているので線が雑でも明後日の方に延びても全く気にしないし、たまにそんな線の方がイメージしていた線より良い事があるので、余程キャンバスが雑然とならない限りは消したりしない。
但し、目のディテイル、位置だけは予めきちんと描いておかないと後々詰まらない調整で顔全体のバランスが崩れる可能性があるので注意している。「目は口ほどに物を言う」と言うが、目は顔を描く際の構成要素として重要度が高い。
ちなみにこの絵における各部分の描き順は、顔の方向を決める十字、目、輪郭、眉、鼻&口、髪、服飾。
下描きが終わったら次は線画の本描き。
レイヤ切替ボタンで下描きしたレイヤを保護レイヤに切替え、灰色にしてから、もう一方の描画レイヤでトレスの様に線画を描いていく。トレスの様に、とは言っても馬鹿正直に下描きをなぞる訳ではなく必要に応じて全く別の所に線を描くこともしばしば(この絵ではマフラー辺りにその傾向有)。前述の通り、下描きはあくまで全体のバランスを取るための物。
なお、普段は 2pix. 幅の中線を使う事が多いが今回は雰囲気に“素朴さ”や“暖かさ”が出せればと細線を描き重ねてみた。瞳と髪の毛も同じ理由で細線の重ね描き。
線画が終わったら今度は人物のメッシュ塗り。
線画のレイヤを保護レイヤに切替え、下描きが描かれていたレイヤをレイヤ削除ボタンで白紙に。その白紙となったレイヤへ 4 pix. 幅の太線や 8pix. 幅の極太線でベースのメッシュを服の部分にざっと塗り、中線で 1 or 2 段階ほど濃いメッシュを使い影付け。
今回はさっと簡単に。
人物のメッシュ塗りが済んだら背景も塗る。
この際、保護レイヤとなっている線画側レイヤのレイヤ色を黒にして全体を眺め、メインである人物(特に表情)が引き立つように、適度なコントラストとなるメッシュ濃度を選ぶよう留意している。一応。
ひととおり塗り終わり、諸々の調整も済んだら完成。
PC や Web で利用する場合は OR ボタンで 2 枚のレイヤを OR 合成後、別ファイル名で保存する。こうすることで線画レイヤとメッシュレイヤを分けたデータを残しておける為、後々の修正やアレンジが簡単。
上記の方法の他、これまで試してきた方法も幾つか。今でも必要に応じてこれらも使う。
一番始めに試した方法だが、予めそれなりに整った下描きでないと時間が掛かり苦労する。また、線の勢いが殺がれ易い欠点もあり。ただ、この方法で上手く描く人もいるので要は腕の問題とも思う。
前述の「削り出し法」、後述の「一発描き」と併用していた時期有り。『ざうすけ』にズーム・ルーペ機能がなかった頃、線同士が重なり合う部分の修正が難儀だったため使っていた。
線画の修正は便利なものの、レイヤを二枚とも使ってしまうため一通り描いたら OR 合成しないとメッシュ塗りの段階で困ることもある。(例図では黒部分と灰色部分とで別レイヤになっている)
下描き無しで白紙のキャンバスに線画を描いていく方法。里海さんが実践している。自分が実際に試したのは落描き 参番を描いた時が最初。
線の勢いも殺がれず、勿論使用レイヤは一枚なのでメッシュ塗りも問題無い。しかし、自分の場合イメージ通りの線をそう簡単に描けるほど器用では無いので、線一本描くにも「描いては消し」の繰返しが多くなる。また、一度描いた線を部分調整すると途端にバランスが崩れ始めその収拾に時間を費やす羽目となる。したがってある程度複雑な絵を描こうとすると結果的に結構手間暇の掛かる方法。
自分にとって常用できる方法ではないが、ちょっとした落描きやスタイラス運びの訓練には最適かも知れない。
「描き方」と言うほどではない、『ざうすけ』に関するちょっとした覚え書き。
『ざうすけ』で用意されているメッシュパターンは 10 種類。普段のちょっとした落描きなどであれば十分な数だが、それなり凝った絵や描かれた対象物によっては足らなかったりマッチしなかったりのケースもある。
この場合、メッシュツールの背景色を透明にして、斜線+水平 or 垂直線の組み合わせで塗り重ねるだけでとりあえず 2 パターン増やせる。また、2 枚のレイヤに異なるメッシュを塗り分けた上で一方のレイヤを上下左右に移動すると更に 12 パターン増やすことが出来る。後者の場合、作業工程を予め考える必要もあるが、出来るメッシュもそれなりにトリッキーなものもあって面白い。興味のある人向けに、メッシュの組合わせを一覧するために適当に作った『ざうすけ』用データを ZAC 形式で纏めたファイル MESHSAMP.ZAC にして置いておく(SAMP001, SAMP002 の 2 枚を packing)。
ただ、類似パターンも幾つかあり、AM スクリーニング的な方法だけに低解像度のキャンバス中で有効となるバリエーションには限界がある。この限界を超えるには FM スクリーニング的な方法である点描の手法で地道にランダムなドットを打つしかない、と言うのが現時点での結論。
現在描いている絵に、過去に描いた絵や自分のトレードマークといった既存の別画像を取り込んで使いたい場合、以下の方法によって可能である。但し正直なところ少々面倒。
作業の際注意すべき点としては、ファイル操作を始めとするザウルス内ファイルを取り扱う上でのお約束を知っている必要があること、取り込むファイルは『ざうすけ』の描画レイヤデータフォーマットに準じている必要があること(1bit/pix. は勿論のこと、現在描いている絵が縦か横かによってサイズが 300x240pix. と 240x300pix. の違いもある)が挙げられる。
『ざうすけ』には 1 ステップの Undo/Redo 機能があるが、さすがに Adobe PhotoShop の様なヒストリ機能は無いので、通常、現在の作業状況から任意の作業状況まで戻りたくとも戻れない。 そんな機能、普通の絵師さんなら要らないのかも知れないが、試行錯誤の繰返しで描いてきた自分には往々にして必要になることがあったので、ファイルのリネーム保存という方法で代用している。
具体的には 8 文字以内であるファイル名を次のような命名規則にしている。
書き始め以降、作業が一段落する or 試行錯誤する直前ごとに「名前を付けて保存」で B, C, D... とインクリメントしてリネーム保存すると、最大で 25 段階の作業履歴を保存することが出来る。
実際例として、お絵描き手順のサンプルでは下描きから順に "SIKI00A", "SIKI00B", "SIKI00C", "SIKI00D", "SIKI00E" 、完成品として PC などで利用する物には識別子としてアルファベットの代りにアンダースコア "_" を充て "SIKI00_" と名前を付けてある。
描く人、対象に合わせて、通し番号やインクリメントする文字の桁数、進数を変えれば応用が利くのではないかと思う。
『ざうすけ』は純粋なモノクロスケッチツールとして特化した必要十分な機能と軽快な操作性が売り(だと個人的に思っている)。だがその反面、いわゆる CG ツールのような機能(直線、枠などの作成、選択範囲の複写、移動、文字入力、エフェクト etc...)は実装されておらず、この点において力不足と思う向きもあるかも知れない。
ところが、ザウルスには「フォトメモリー」というアプリが標準で付属しており、実は前述のような機能は一通り揃っている。したがって、フォトメモリーの併用により何ら問題は無い。実際、自分は描いている絵にその手の機能を使いたい場合、 JPEG ファイルによる『ざうすけ』−フォトメモリー間のデータ受け渡しをする事で結構使っている。具体的には落描き 壱拾参、壱拾伍がフォトメモリーを多用している例。
ただ、そう言ったことをしていそうなザウ絵を今まであまり見た記憶がない。方法を知らないのか、そこまで手を掛けるのが面倒なのか、はたまた己の思い至らないような理由があるのかは分からないが、PC などの助けを借りずザウルス単体で出来る事なのに勿体無い気がする。