ここでは『PrismPaint3.0』を使った自分なりの描き方を纏めてあります。
PrismPaint2.0 での描き方を纏めてから一年経つ間に、ツールは 3.0 に ver.up され格段に使い易さと機能が向上しました。また、ユーザである自身も上手な人の描き方をいくつか参考にしたり試行錯誤の繰り返しをしたりで、ようやく自分なりの定石が掴めてきました。まだまだ改善すべき点がある上、ツールの機能に依存しきっていますが。
それでも ver.1.0 からデバッグでいじめてきた者として、ツールの機能や癖は一通り知っているつもりです。その上で組み立てた工程なので、このツールを初めて使う方、或いは使い始めて間もない方にとっては何らかの参考やヒントの足しになるかも知れません。
『PrismPaint 3.0』を使った自己流による描き方の手順説明。サンプルには写生 其之七を使用。当文書読込時におけるデータ容量軽減の為、表示用サンプル画像は 50% サイズ。100% サイズの画像は表示用サンプル画像よりリンクしてあるので必要に応じて参照されたし。なおいずれの画像も色は未調整。
ペンの色と太さは起動時(黒、1px. 幅)のまま、不透明度を 20% に設定。鉛筆でラフスケッチをするように補助線も含めざっくばらんに描いていきます。大まかな構図が欲しいので細かいことは気にしません。が、そのぶん本来の描画力がさらけだされます。つまり、自分の画力はこの程度と言うことです。
ちなみにこの段階では背景レイヤ 1 枚の状態で通し、他のレイヤは一切使いません。下描きは走り描きに近い速度で描くことがまま有り、 3 枚レイヤの状態では必要な動作速度を得られない可能性がある為です。
はじめに下準備。背景・前景レイヤの入れ替えボタンで下描きを前景レイヤに移し、透明部分保護ボタンで何も描かれていない部分を保護します。そしてカラーピッカで適当な色を選び、レイヤ変更ボタンで前景レイヤを選択してから全画面塗りつぶしボタンを押します。すると下描きの線のみが先ほど選んだ色で塗りつぶされます。
この際、選ぶ色はこれから描こうとする主線の色が目立つ色(補色系)にすると良いです。自分は緑をよく使います。色が濃すぎると思ったら色を変えて塗り直しても良いですが、レイヤ不透明度ボタンで不透明度を下げると手っ取り早いです。
下描きの色が決まったらレイヤ統合ボタンで下描きを背景レイヤに戻します(レイヤ不透明度を下げていた場合、背景・前景レイヤの入れ替えボタンを使うと不透明度 100% に戻ってしまうので)。空いた前景レイヤを上書き重ねモードにしたら準備完了です。
主線は 1px. 、不透明度 30% のペンで描いていきます。いちおうトレースするような形ですが、下描きが気にくわなければ全く別の所に線を描くことも少なくありません。また今回は実験で肌色を使っていますがこれは結果的に失敗でした。自分の描き方では灰色が適しています(理由は後述)。
と、描いている間にこの構図がとてもつまらないことに気付いたので一時休止。しばらく考えて、視点を真横から斜め上よりの俯瞰に、やけに大人しげな女の子を楽しそうに母親へ話しかけているよう修正することに。
すでにおおよその主線は描き終えていたので、下描き用の背景レイヤを消去ボタンで白紙に。改めて修正用の下描きをします。
主線と区別が付くように修正用下描きの色として今度は濃い青を選び、おおまかな補助線を引いてパースをイメージし易いようにしておきます。そして母親と大きさを比較しながらざくざくと女の子を描いていきます。この年頃の女の子は母親に甘える傾向にあるので寄りかかってます。
この際、母親と女の子の位置関係があまり芳しくなかったのでレイヤ移動ボタンで背景レイヤを上下左右に動かし、女の子が母親の膝に座っているような位置に調整しました。
修正用下描きが出来たら先ほどと同様、前景レイヤに主線を起こします。視点の変更に伴い母親の主線も併せて修正します。ただ、頭は本を読み聞かせながら話しかける女の子へ耳を傾けているような角度に見えたのでそのままにしました。
ひととおり主線を描いたら下描きの背景レイヤを白紙にして主線の状態を見直し。また服の皺など細かいディテイルも描き加えます。これら修正と加筆が一通り済んだら主線は終了です。
人によってはあまり主線を描きこまずに、彩色しながら随時修正という方法でも良いと思います。ここまで描いてもいずれ修正が必要なことは明らかなので。ただ自分の場合、修正の余地があるとそちらが気になり彩色に集中できなくなるため、この段階で描けるところは描いてしまいます。
下準備は主線の描き始めと同様、主線をレイヤ不透明度で濃度調整してから背景レイヤに統合するくらいです。
まずは肌から。カラーピッカで肌の基本色を選び、空いている水彩レイヤへ一番大きなペンで大まかに塗ります。主線からのはみ出しは気にしません。後ほど消してしまうので。
(余談になりますが、肌色と一口に言っても人種はもちろん年齢や性別、屋内外、光源などによっても変わるものなのでとても微妙な色だと考えています。カラーピッカで選ぶ際は HSB モードでおおよその色を選んでから RGB モードに切り替えて微調整し、出来れば実際に試し塗りをして吟味するくらいが良いです。実を言うと、母親の肌色は一度陰影まで塗ってから NG にして塗り直しています。)
次に前景レイヤを乗算重ねモードに切り替え、肌の基本色を不透明度 20〜30% にして陰影を塗ります。陰影の暗い部分は塗り重ねることで濃くします。あまりに暗いところはカラーピッカで明度を下げて塗り重ねる必要がありますが、そういう機会はあまりありません。
陰影を塗る際に前景レイヤに塗り分け、基本色をそのまま使う場合の長所と思われる点は以下の通りです。元は始めの二つが目的だったのですが、試しているうちに三つ目の点に気が付きました。
逆に短所もあります。基本色が薄い場合、濃度が上がらないこと、それとぼかしツールによる効果が出にくいことが挙げられます。前者は濃い色を選択し塗ることで対処します。後者は次のステップで対処します。
陰影を塗り終えたら前景・水彩レイヤ統合ボタンで基本色と陰影を水彩レイヤへ統合します。
統合前に色が薄いために陰影がうまくぼかせなかった場合、ここでぼかしツールを使うと効果が得られます。ぼかしツールはぼかす色を低い不透明度で塗り広げるので、薄い陰影色のみでは透明となって塗り広げられません。しかし基本色と統合することで濃い色となるので塗り広げられるようになるはずです。
ぼかしが済んだら、ズームやルーペを使い消しゴムツールで主線からはみ出している色を消していきます。要はマスキングです。ここで手を抜くと後で別レイヤの背景と重なった時に汚らしくなるので丹念に。
なお主線上の色は残します。主線が同系色となるのが狙いです。この段階では上手くいっていると思います。
綺麗にはみ出しを消したらレイヤ統合ボタンで背景レイヤに統合します。これで肌の彩色は完了です。
次は髪とその同系色である眉、瞳を塗ります。手順は基本的に肌の時と同じです。
瞳は上から下へ軽いグラデーションを掛けていますが、これはぼかしツールによるものではありません。背景レイヤ上に主線の色で単色グラデーションを掛け、水彩レイヤと前景レイヤで基本色と陰影色を軽く塗ってあります。ぼかしツールでグラデーションを掛けると色がくすむ気がするので瞳には使いたくないのが理由です。
はみ出しを消す前の段階は見ていてかなりげんなりするものですが、単純作業と割り切り、めげずに根気よく消していきます。
この時もそうでしたが、あまり濃い色が乗ると主線が見えなくなることがあります。その場合は色が塗られている水彩レイヤのレイヤ不透明度を 50% 以下に下げます。すると主線が透かせるので作業がし易くなります。
ここで失敗に気が付きます。主線の肌色に服の青を重ねたところ少々奇妙な色に。場当たり的に塗る色を決めているせいです。普段は主線を灰色にしていたので予測できませんでした。この後、これと同じことは女の子の瞳、持っている絵本にも起こっています。(女の子の瞳は主線を灰色に描き直すことで回避しました)
主線の上に水彩で塗った色を重ねる場合は偏りのない灰色が良さそうです。それ以外の色を使う場合、重ねない方が良いと思います。
肌、髪、服と一要素ずつ塗ってきましたが、隣り合っていないならば一度に複数の要素を塗っても構いません。今回は女の子のリボンと服、口を一度に塗っています。
それと、始めは女の子の瞳も灰色を使って母親と同じようにグラデーションを掛けてみました。しかし、子供らしさが損なわれる気がしたので単色二段階に変更しました。この描き方だと視線の方向が少々曖昧になるのが欠点です。
細かい部分を挙げるときりがありませんが、主な修正は以下の通りです。
人物部分の彩色は以上です。基本的には既存の絵を背景レイヤに、重ね塗る部分は水彩レイヤ、透かしたくない部分は上書き重ねモードにした前景レイヤに描くことで修正作業を行っています。3 枚レイヤモードは 1 枚レイヤモードに比べ動作速度が遅くなりますが、レイヤの性質に合わせて描き分けることで欲しい効果が容易に得られたり、描き直しや試行錯誤がし易くなります。
これまで描いてきた人物部分をレイヤ統合ボタンで背景レイヤに一旦まとめ、背景・前景レイヤの入れ替えボタンで前景レイヤに移します。これで背景・水彩レイヤの二枚が空き、準備完了。下描きには背景レイヤを使います。
まず俯瞰視点のパースを把握するため、不透明度 30% の黒でおおまかな床面の補助線を引きます。そしてその面に載せるつもりでいくつかのオブジェクトを大まかに描きます。子供がいる家なので、創造力を伸ばす積み木の箱と情緒を育む本を二冊ほど。今日日流行りのゲーム機などこの家庭には無用です。それとお目付役(?)の猫を一匹。
ひととおり描けたらカラーピッカで明るい緑を選び、描画ツールの描画モード変更ボタンで比較(明)(白い菱形:◇)モードに切り替え、オブジェクトの下描きをなぞります。すると下描き線のみが明るい緑に塗られるので主線を起こす際に見易くなります。
以上で下描きは完了です。
先ほど緑に塗り替えたオブジェクトの下描きを参考に、空いている水彩レイヤに主線を描きます。なかばトレース作業になります。
この際、オブジェクトが人物より遠いところにあることを表現するために主線の色を薄く、線幅を細く描いています。ルーペは必須です。
あるいは彩色後に輪郭をぼかしても遠近を表現できるとは思いますが、猫の髭がぼかしで見えなくなる可能性があったので今回は使いませんでした。
主線を一通り描き終えたら背景レイヤの下描き部分を消しゴムで消し、水彩レイヤ乾燥ボタンで水彩レイヤと背景レイヤを統合します。
床面の補助線はもう使いませんが、パースの感覚を把握しておくためあえて残してあります。
基本的には人物部分と同じように一要素ずつ塗り分けていく作業ですが、空いているレイヤは水彩レイヤのみなので陰影も水彩レイヤに塗ることになります。とはいえ主線とは別レイヤなので塗り直しは楽ですし、あまり凝った塗り方をしなければさして不自由はないと思います。
また人物部分との混乱を避けるため、レイヤ可視状態変更ボタンで前景レイヤを不可視にしておきます。これで前景レイヤは見えなくなるだけでなく、誤操作で塗られたり消されたりすることもなくなります。
全体の配色をはかりつつ、一通りのオブジェクトを塗っていきます。
凝った塗り方をしても良いのですが、主題は人物にあるのであまり背景に目を惹かせないこと、それと遠くにあることから細かいところは見えないはずなので、人物に比べ淡白な塗り方にとどめています。もちろん要所要所はきちんと手を掛ける必要がありますが。
この段階ではまだ各オブジェクトとも宙に浮いているようにしか見えず不自然ですが、我慢して描き続けます。
全て塗りおえたら次のステップに備え床面の補助線を消しておきます。
オブジェクトまで塗り終えたら次は人や物が床に落としている影を描きます。これにより文字通り「地に着いた」ようになります。
まず下準備。全レイヤ統合ボタンで背景レイヤへ統合し、背景・前景レイヤの入れ替えボタンで前景レイヤへ移します。次に床として合いそうな色を選び、背景レイヤを全画面塗りつぶしボタンで塗りつぶします。 この際、背景レイヤのテクスチャ ON/OFF ボタンを ON 、不透明度を 20〜30% に設定して塗りつぶしました。こうすると見えるか見えないか程度に不規則なパターンが出てカーペット風の床になります。
ただ、人物のハイライト部や白目部分は透明として扱われテクスチャが透けて見えるので、その部分のテクスチャは消しゴムで消す必要があります。
レイヤの整理と床のテクスチャが出来たら影は空いている水彩レイヤに塗ります。人物の陰影を元に一次光源の方向を決め、その光源によって床に投影される影を想像しながら 10〜20% の灰色で塗っていきます。あまり濃いと背景として主張が強すぎてしまうので程々の濃度が良いようです。
オブジェクトによる影を塗り終えてから一旦作業休止。人物による影を描こうか考えます。写実的には描かないと嘘になるものの、描くと背景としては主張が強くなります。実際にいくつかの濃度で描いてみて、結局薄めで描くことにしました。
この状態のままだと本の影と人物の影との重なり部分を描くのが面倒なので、レイヤ統合ボタンで全レイヤを背景レイヤへ統合してから水彩レイヤに人物の影を塗ります。それと併せて影の輪郭を強めにぼかしました。服の皺などの影に比べ遠くに投影されるので、二次光源や周囲の散乱光により影のエッジが弱いはずです。
別名で保存ボタンを押して保存ダイアログを開き、用紙の向きを決めて BMP 形式で保存します。保存された BMP ファイルは PC で読み込み、レタッチソフトなどで PC の画面上でもザウルスの表示に近づけるよう色調補正します。補正方法は色々考えられますが、自分の場合は Adobe Photoshop を使い色相と彩度を -5〜20 の間で動かして最も近い色調を探します。今回は色相のみを -5 にしてあります。
色調整後は BMP 形式で別名ファイルとして保存しておき、あとで JPEG ファイルなどを出力する時に使います。