この娘はごく普通の女子高生。「かのりん」と愛称(?)で呼んでくれる友達も多く、性格、言動とも明るく何ら問題無い。制作側としてはあんまり普通すぎて影が薄くなるのを恐れて、アクセントとして手首に大きなバンダナ結わせたり、地球外生物ポテトをお供にしたり、妙な言葉遣いにしてるのかも。
でもバンダナとポテトはあくまでオプションであって佳乃自身が持つ特徴ではないし、妙な言葉遣いは姉の聖ゆずり(しかもこちらの方がなかなかの曲者風味でインパクトは強い)だから、オリジナルな属性・特徴とはいえず。そう言った意味で、キャラクタ的インパクトというか印象が薄い。
ストーリの方も、ポテトのいたずらから色々関わるようになって、憎からず付き合っていくうちに事件(と言うか謎)に巻き込まれていく…と言った感じで無難なのか平凡なのか。最後 Happy End は何の憂いや悲しみ、寂しさも残さずめでたしめでたし、というのが良いと言えば良い。でも印象薄い。バンダナの存在もある程度予想通りだったし。
しかし主人公の”力”や”空にいる羽根を持つ少女”など、物語全体の根幹には殆ど全く触れられていないか適当にごまかされてる。”力”はクライマックスで佳乃を神社のご神体の呪縛から解き放つための道具にされてるし、”少女”は神社のご神体である羽根で尻尾が出てるくらい。
あまつさえラストに主人公が”力”を失い”少女”を探すことを止めてしまうのは、初回 play で他に何も情報を持ってなければともかく、他のストーリを読んだ後は「キサマ、ホントにそれでエエんかいっ!」とツッコミを入れたくなることしきり。
この娘のシナリオはサイドストーリか。
しかし主人公、食い物に釣られっぱなし。食欲という基本欲求を攻撃する聖も聖だけど、何とも情け無さげ。
そういえばこの姉妹ってお互い負い目を持ってるなー、とか。
妹の佳乃にとって姉の聖は、幼い頃に母親を亡くして以来自分を世の中の色々なものから護ってくれている存在だから、感謝と同時にそんな感情を持つのも致し方ないとは思う。じゃあ、姉の聖にとって妹の佳乃は?
聖が持つ佳乃への負い目の大きな要素としては、シナリオ中回想されている夏祭りの晩の事。縁日の屋台で買った風船をきちんと渡してあげられなかったことが一つ、自分が先に触れたにもかかわらずご神体の呪縛が佳乃に罹ってしまったことが一つ、かな。
でも「なにもそんなに…」って気もする。風船を渡せなかったのは残念だけど、懐の全財産はたいて買ってあげてるんだ、聖自身他に買いたい物があったろうに。なかなかどうして妹思いの良い姉でしょ。ご神体の呪縛は…その真相を知らないからそう思ってしまうんだろうけど、超常現象に触った順番もへったくりもないのは頭脳明晰っぽい聖なら冷静に考えれば分かりそうなもの。「自分の妹」という思考が冷静な判断を邪魔してるような。
或いは、これまで普通の家庭でのうのうと生きてきた自分には計れぬところかも知れないけど。
それにしても風船にしろご神体の呪縛にしろ、佳乃の”母親に会いたい”って意識を端に発してるのが何とも…。風船は「母親に会いたい」→「死んだ母親は空にいる」→「空を飛びたい」→「空中に浮かぶ風船なら空を飛べるかも知れない」って思考からねだるに至ったわけだし、ご神体の件もそれに込められた白穂の八雲への残留思念(?)が、その幼さ故に聖よりも母親のことを強く想ってた佳乃に反応した結果で。ここまで想われてた母親は本望かも知れず。
……父親の立場は?(汗)